2021年09月03日
414号特集「“居どころ”つくって元気に暮らす」と読者にお勧めの図書の紹介
ビッグイシュー414号を販売中です。




特集は、「“居どころ”つくって元気に暮らす」

心身ともに安定した生活を送るために必要な“居どころ”
”場”を提供している3か所の取り組みを紹介しています。
①川崎市内で不登校の子どもたちを対象に「禁止事項なく遊べる場」を作ろうと始めた「フリースペースえん」
②広島市内で被爆者との交流会や核問題、紛争、貧困、気候変動などのイベントを開いているカフェ「Social Book Cafeハチドリ舎」
③「ごく小さな集まりで前向きな会話のできることが力になる」と考えて思考の健康を保つための場所「イドコロ」
フリースペースたまりば理事長の西野博之さんは語ります。子供たちに居場所を長年提供し、子供が発信するSOSに対応していく中で・・・・「伝え続けてきたのは”生きているだけでOK”だということ。そこに行けば見守ってくれる誰かがいて、いつでも戻れることができる。そんな場所の存在は、今も切実に求められている」と。
改めて、”居どころ”の大切さを認識する特集です。
その”居どころ”=「居場所」がテーマになっている児童図書を紹介します。
その本は、安田夏菜著 『むこう岸』(2018/12/6講談社刊)

内容 〜講談社のHPより〜
小さなころから、勉強だけは得意だった山之内和真は、必死の受験勉強の末、有名進学校である「蒼洋中学」に合格するが、トップレベルの生徒たちとの埋めようもない能力の差を見せつけられ、中三になって公立中学への転校を余儀なくされた。
ちっちゃいころからタフな女の子だった佐野樹希は、小五のとき、パパを事故で亡くした。残された母のお腹には新しい命が宿っていた。いまは母と妹と三人、生活保護を受けて暮らしている。
ふとしたきっかけで顔を出すようになった『カフェ・居場所』で互いの生活環境を知る二人。和真は「生活レベルが低い人たちが苦手だ」と樹希に苦手意識を持ち、樹希は「恵まれた家で育ってきたくせに」と、和真が見せる甘さを許せない。
中学生の前に立ちはだかる「貧困」というリアルに、彼ら自身が解決のために動けることはないのだろうか。
講談社児童文学新人賞出身作家が、中三の少年と少女とともに、手探りで探し当てた一筋の光。それは、生易しくはないけれど、たしかな手応えをもっていた――。
講談社BOOKのHP ⇒ こちら(https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000317979)
この小説の最大のキーワードが、「生活保護法 第一章 第二条『すべての国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」・・・・・・・・

「貧しさゆえに機会を奪われる」ことの不条理に対して、できることを模索していく中学生の姿に感動します!
その中学生が行動できたのも”カフェ居場所”があったからこそ。
小学校高学年以上を対象とした児童文学ですが、大人こそ読んでほしい作品です。
生活困窮者に対する差別的な発言もあった昨今だからこそ、改めて読んでほしいと思います。
ビッグイシュー414号の雨宮処凛さんの「活動日誌」vol.70では、7月に開催された「女性のためのなんでも相談会」が報告されています。2日間、124件もの様々な相談があり、話を聞く中で一つ一つ問題を解きほぐしていったという報告です。このレポートの最後に雨宮さんは、「女性不況ともいわれるコロナ禍で、女性の自殺者が増え続けている。そんな中、少しでもほっとする空間が作れたら。スタッフたちのそんな思いが詰った空間は心地良くて、こんな場がもっともっとあればいいのに、と心から思った」と語っています。
この相談会もほっとできる大切な”居場所”の提供となっていますね。
